エクアドルの熱帯雨林に住むアチュアル族に会いに行くラーニング・ツアーはコロナで中止していましたが、昨年4年ぶりに約2週間のツアーを催行できました。そのツアーについてレポートを書く機会があったので、こちらでもその内容をシェアします。
1. ツアーの目的
私たちは、地球温暖化や貧富の差など、多くの課題を抱えており、今までのやり方や考え方を変えていくことが求められているが、今の生き方を「変えることができない」「仕方がない」と思いがちだ。アチュアル族は、お金を用いず自然と共に暮らしてきた先住民で、豊かな文化、智慧を保持しており、熱帯雨林の豊かな自然、アチュアルの文化・考え方に触れることで、私たちの生き方の新たな可能性を探求する。
2. アチュアル族について
アチュアル族は、アマゾンのパスタサ川周辺のエクアドルとペルーにまたがる200万エーカー(東京ドーム約17個分)の地域に84の集落に別れて暮らし、人口約2万人。アチュアル語のみを話す人が多く、会話するにはアチュアル語⇔スペイン語⇔英語⇔日本語が必要。エクアドルの首都キトから熱帯雨林の入り口の街プヨまでバスで移動し、そこからセスナで約1時間かけ、熱帯雨林の中のアチュアル族の集落に到着した。
3. アチュアル族の文化
(ア) 森はスーパーマーケットであり、倉庫であり、薬局である
アチュアル族は、食べ物はもちろんのこと、家を建てる資材や装飾品をつくるための木の実、怪我や病の時に用いる薬草など、すべて必要なものは森で手に入れる。そのため、「自分の手元にストックしておかなければならない」、「もっともっと採っておかなくてはならない」という発想がなく、「所有する」という概念がない。最近までお金の存在も知らなかったが、今では、集落で蓄えておき、緊急時に街に病人を連れて行く時のためなどにお金を使う。
(イ) 畑を切り開くのは夫の役割、面倒を見るのは妻の役割
アチュアル族は父系社会だが、男尊女卑ではなく、それぞれの役割が決まっている。畑を切り開くのは夫、面倒を見るのは妻、狩りや籠を編むのは男性、器づくりや機織りは女性。「どちらが偉いということではなく、お互いが助け合って生きている。どちらかが欠けたら生きては行けない」と彼らは言う。
(ウ) 森の精霊と夢
アチュアル族は、毎朝夜明け前に家族で集まり、晩に見た夢を共有し、父親がその夢を解釈し、その日の行動(狩りに行く、家で過ごすなど)を決める。集落全体や個人にとって大切なことを決める時は、儀式を行なって森の精霊の言葉をガイドとする。彼らの「森の精霊と共にある」という感覚は、日本人の八百万の神の感覚と相通じるものがあると感じた。
4. 現代を生きるアチュアル族
集落にはエクアドルの制度に沿った小中学校があり、高校があるところもある。集落の若手リーダーの何人かは大学で学んでおり、「街の暮らしは大変で、集落の方が全然いい!早く戻ってみなのために貢献したい」と言っていたのが印象的だった。川沿いに暮らす彼らにとってボートは生活必需品だが、ソーラーボート・プロジェクトを立ち上げ、化石燃料からの脱却を図ろうとしていたりもする。自分たちの文化を守りながら、現代文明に毒されることなく、必要なものだけ取り入れる姿勢に学ぶべきことは多いと感じた。
5. アチュアル族の希望
アチュアル族は自分たちの生活と文化の基盤である熱帯雨林を原油採掘などによる破壊から守りたい、と力を尽くしているが、それは彼らのためだけに必要なのではなく、この地球を守るという人類全体にとって必要なことだと言う。「一緒に手を取り合ってやっていこう!」が彼らの希望でありメッセージだった。
今回、4年ぶりにアチュアル族を訪ねたが、前回以上にアチュアル族や熱帯雨林の自然から歓迎されている、と感じた。地球の緊急度が増し、私たちへの期待が大きくなっているからこそ歓迎されるのであり、私たちの責任は重くなっている、と感じさせられたツアーだった。
Commenti